第十五巻
文 箱
(学芸員 丹 美保)
当館には雅(みやび)な「文箱(ふばこ)」が展示されています。 「文箱」とは、手紙や文書などを入れておく細長い箱のことを言います。 また手紙や文書を現代の郵便のように相手先に届ける場合も「文箱」が使われました。 文箱は平安時代に使われ始め、広く実用的になったのは室町時代頃からのようです。 江戸時代になると身分の高い女性の婚礼道具のひとつとして、蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)をあしらった美しい文箱が作られるようになりました。 展示されている文箱は全体に黒塗りで落ち着いた印象をあたえています。 金色で描かれた流れる水の優美(ゆうび)な曲線と、川辺に咲く杜若(かきつばた)を前面にあしらった絵柄が美しいことから女性が使用したと思われ、また描かれている家紋が伊達家の「竹に雀紋」と近衛家(このえけ)の「牡丹紋(ぼたんもん)」であることから、伊達家に嫁(とつ)いで来られた近衛家の姫様ゆかりの品かと思われます。 優雅さが偲ばれる逸品です。 |
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