重箱(じゅうばこ)

(学芸員 丹 美保)

当館には梨子地蒔絵(なしじまきえ)の美しい「重箱」が展示されています。
重箱は「食べ物を盛り付ける蓋付(ふたつ)きの器」で、一般的に三段・四段あるいは五段それぞれに食べ物を盛り付けて積み重ね、一番上の箱に蓋をして使用します。
四角形が主な形ですが円形・六角形・八角形など変形したも のもありました。
重箱の歴史は古く、室町時代から重箱という言葉が使われていたようですが、当時はまだ高級な器でした。庶民に広く普及するのは江戸時代になってからです。
現代でもお正月のおせち料理の盛り付けや行楽弁当を詰めるのに使われています。

展示の「重箱」は美しい梨子地に伊達家の「三引き両」と「雪(ゆき)に薄(すすき)」の二種類の家紋のみ描かれています。
写真では二段と三段に分かれていますが、本来は五段重に出来ます。
大きさは二三センチメートル四方、高さは五段すべて重ねると約四二センチメートルになります。
伊達家では「雪に薄」は姫様方の紋として使用される場合が多かったので、展示資料も姫様ゆかりのお道具の一つと考えられます。当館で「雪に薄紋」が見られる唯一の資料です。
 

 家紋のみのあしらいがシンプルで美しい逸品です。